美意識が上がったら、洗面台もきれいになった。

そこまで『キレイ』じゃなくても、

『不潔』じゃなければなんでもいい。

 

そんな私の意識が変わったのは、

美容院で奮発してめいっぱいのトリートメントをしてもらった時だ。

 

 

 

16000円かけた髪の毛は、

指を通してもまるでそこに髪がないかのようにサラサラになった。

見た目もツルツル。カットもカラーも気に入っていて、それからというもの私は髪を大切にするようになった。

 

毎日ヘアケアをしてサラサラ髪をキープしていたら、

今度はスキンケアもしたくなってきた。

それまでスキンケアといえば薬局でテキトーに買った安くて大容量の化粧水をお風呂上がりにバシャバシャ顔にかけるだけだった私が、

美容系のYouTubeを観あさり、こだわりの洗顔法や化粧水を使うようになった。

 

ズボラで時間のかかることが嫌いな私は、

もともとお風呂に入る、シャワーを浴びるのがそんなに好きではなかった。

お風呂上がりはドライヤーもせず自然乾燥に任せ、

髪の毛が半濡れのままベッドに入ることもしばしば。

「ショートヘアは似合わないから」とロングを好んでいたにも関わらず、

その分かかる手間を全て省略してしまっていた。

 

そんな私が、お風呂上がりにしっかりスキンケアをするようになった。

顔だけじゃなく全身もケアするようになって、

もちろんドライヤーもしっかりするから

私の一連の"お風呂の流れ"にかかる時間は倍になった。

でも「しっかりケアをした」という実感が、私を大満足させていた。

 

のだが。

 

ある日気がついた。

洗面台の前で髪の毛をとかし、

洗面台の前でドライヤーをする。

髪の毛がとぅるんとぅるんになるかわりに、

洗面台が抜けた毛で毛まみれになっていた。

 

そこで思い出した。

美意識が上がる前にもきまぐれにドライヤーをすることがあったが、

そんな時、たった1度、私は夫に文句を言われていた。

 

「洗面台毛まみれやん。なんで掃除せんの」

 

私はたしかその文句をテキトーに受け流したように思う。

無口であまり主張をすることのない夫はそれ以上なにか言ってくることはなかったが、

もしかしたらその1度に限らず、何度もストレスを抱えていたかもしれない。

私に代わって洗面台を掃除してくれていたかもしれない。

 

それで本当にいいのだろうか。

髪がきれいになり、肌がきれいになり、

洗面台は汚くなる。

私は自分の見た目がきれいになって満足する。

私以外の人が、不満を抱く。

 

そんな『私』って、本当に『キレイ』だろうか?

 

そう思ったら洗面台を掃除せずにいられなくなった。

お風呂上がりのヘアケア・スキンケアが全て終わったあと、

必ず洗面台の掃除をするように。

 

ピカピカの洗面台を見ると、

まるで心まできれいになったような気がしてくる。

 

 

 

美意識が上がったら、洗面台もきれいになった。

自分の都合で他人に迷惑をかけないこと。

これで私も、外側だけじゃなく

内側も少しだけ、きれいになれただろうか。